ダークヒーローと愉快な仲間たちのお話、完血。
終わり方は非常に綺麗で、普通に円満終了。何もかもがなるべくしてなった感じがある。冬美は人間に戻さないといけないし、戻ったのに魔界にいたらまた些細なことで死んじゃうから、そりゃあスタズが人間界へ行く以外ないよなと。別に魔界と人間界はどうとでも行き来可能なので、魔界を捨てる哀しい選択とかでは全く無いゆるさもいい。唯一、前々からではあるが、ベルは明確に失恋してしまったので、そこは好みが分かれるところ。
終わりよければいい感じというやつで、結構満足なんだけど、ひたすらに惜しいのは、アキムから敗走し再戦するまでの冗長さ。読むの辞めかけるレベルだったので、アレだけは許容できない。
あの展開は何のためのものだったのかと言えば、魔族のゴタゴタと無関係な冬実を、魔界の命運がかかった戦いに、ありったけの魔族を吸収させた狂気の状態で駆り出すという選択は、スタズ以外の人物からしても禁じ手(提唱者のフランケンすら提案しなかった)であり、それを正当な手段に確定させるのが最大の目的だろう。
ハードな修行をした、魔界トップの戦力を集めた、あらゆる資料や仮設を洗って策を練った…と、手を尽くしに尽くしてもダメだったわけで、実際冬実に託すことに異論はなかった。けど本筋の進展がゼロと言える溜め期間を延々と重ねるのは流石にキツいっていう。
ブラックリスト組の結束を端折って本番で初登場にしちゃうとか、同じ大筋のまま短縮する手はいくらでもあったはずだけど、所謂ぽっと出の捨てキャラみたいな構図になるのが嫌だったんじゃないかと思う。作者の漫画はこの作品しか読んでないけど、キャラ愛凄い強いのが見て取れるし。
とまあ明確に惜しいところはあるのだが、終わってしまえば一回谷があっただけの話。独創性と王道が共存しているような独特の作風は非常に好きだった。
上ではキャラ愛の強さをグダグダ部分の戦犯呼ばわりしてしまったけど、勿論本来は悪い性質ではなく、作品全編では実際かなりのプラス要因。些細な人物でも深く掘り下げることで、魔界というアウェーの塊な世界観を馴染ませることに大きく貢献させていた。
画力なんかも地味に正統進化し続けているので、今後が更に期待できると思っている。漫画の次回作の情報はまだ見かけないが、楽しみにしたい。