感想:アサルトリリィアームズ

アゾネット | 商品詳細 | 『アサルトリリィ』アサルトリリィ アームズ

小説続刊ないのかーと思ってたら(ほぼ)アゾン公式ショップ限定で2巻出ていることを知ったので買った。

電ホビでWeb連載してたものを書き下ろし入れて書籍化したものだとか。

概要

外伝っぽい全然雰囲気違うタイトルだし(というか外伝という触れ込みが本書中にある)、中身も主役チームである一柳隊以外の視点が多いが、シナリオ上は「アサルトリリィ~一柳隊、出撃します!~」の続刊に相当する内容。

1巻は一柳隊の面々を主軸にした全体のプロローグ的構成に対し、2巻は工廠科、つまりメカニック分野をテーマに様々なキャラをオムニバス形式でピックアップする構成。

アニメでは眼鏡の子、真島百由ちゃんが1~4話まで毎話出ていて準レギュラーだが、彼女が2巻全体での主役という扱い。

特記事項

真島百由

表紙の人物1。工廠科2年の赤縁メガネ。2巻全体の主役。アニメではレギュラー枠で毎話出ているが、小説1巻では影も形もなかった。

夢結が所属したアールヴヘイムの解散に関わる事故を起こしており、夢結と不仲。別件でまた洒落にならない事件を起こしているため、他の工廠科生からも評判が悪い。

しかしアニメだとどっちの描写もない。夢結に至っては不仲どころか夢結の方から個人的な相談をしに百由の工房を訪問している。大体なかったことになってる?夢結に関しては答えが出るが、工廠科内で毛嫌いされているという設定は、この2巻とアニメ5話までの比較では不明なままだ。

第1世代CHARM

旧型CHARM。梨璃達が使っているグングニルとかダインスレイフとかは第2世代。百合ヶ丘は先進エリート校なので第2の普及率が高い。

世代を分かつ基準は変形機構の有無。第1世代は変形しない。つまり剣型は剣として、銃型は銃としてしか運用できない。
使い分けたい場合は両方運搬して、更に起動状態と休止状態(再起動は待ち時間あり)を適宜切り替える必要がある。

ただ、変形しないということは可動部が少ないわけであり、その分強度限界は第2より高い。また持ち替えの手間を除けば起動の隙も第1のほうが短い。
また、あくまで変形の違いによる世代差なので、火力に関しては普通に現役。

第1世代型の新作はもういずれのメーカーからも出ない状態だが、サードパーティ製のオプションはまだ出ていたり、ガーデンによっては未だ主力CHARMになっているくらいには根強い支持があるようだ。

学費

学費事情がここで明かされた。リリィは学生であると同時に軍人なので、学費どころか給料出てるらしい。一方で百由は生徒の権利を訴える際に「学費払ってる」と主張しているので、学費を差し引いた分の給与が支払われている、というのが正確なのだろう。

まあ当たり前である。娘を最前線に送り出しつつ、学費も払うなんて普通の神経した親には無理だ…。実力者の早期引退は許されないが、なることに関しては徴兵レベルで強制されてるわけでも無いみたいだし。

吉阪凪沙

アニメでは5話時点で一切出てこず、恐らくもう登場しない様子だが、小説では1巻からそれなりに登場している主要人物の一人。梨璃のクラス、1年椿組の担任だもの。
やはりというか元リリィで、彼女の現役時代の戦いがこの巻で語られる。

石川精鋭

小説だとモブ除けば初めて実際登場した男キャラ。ヒゲのおっさん。国防軍ヒュージ対策総司令。なんとも判断しづらい肩書だが、まあこの世界の軍はヒュージに全リソースを割く組織だと思われるので、トップと捉えて差し支えないだろう。彼の娘、葵が他校に在籍しているが、アームズでは名前のみの登場。

「CHARM使いとしてはそこまで優秀ではなかった」と書かれているが、単にリリィと比べたら話にならないだけなのか、無適性の男の中でも更に微妙だったのかは定かでない。
凪沙の師匠だったから恐らく前者だとは思うが。

なお、CHARMの使用に関しては、別に男でも問題ない。マギを攻撃力に転化する武器であり、若年女性とそれ以外はマギ量がまるで違うという点を除いては。
アニメだと指輪つけて、初回起動になんか契約めいたことまでしてたから、「使えるには使える」という点もなんだか怪しくなってる気はするが。

六角汐里

1巻でもサブキャラとして度々登場した梨璃のクラスメイト、今回はメインの章が用意されている。

二刀流スキル「円環の御手」により高い戦闘力を持つが、CHARMを盾の代わりにして突進するなど、CHARMを酷使するような戦闘スタイルにも繋がっており、リリィとしては評価される一方でアーセナル(担当メカニック)からのウケが悪い。今回の壊しぶりだと修理工数が他のリリィ5人分くらい掛かるんだと…そりゃ愛想も悪くされるわ。

戦法を直すべきかもしれないが、CHARMが頑丈になってくれれば一番いいのだが…?というのが彼女の章のテーマ。…まあ、癖もいくらかは直したほうが良さそうだ。ちょっとデストロイヤー過ぎる。

谷口聖

1巻において、巻頭カラーページの集合絵に名前付きでいたけど、肝心の本編で一切名前が出なかった謎の二年生。
消去法で夢結様チラシ剥がした先輩が設定上こいつなのかと筆者は疑っていたが、どうやら全然違ったようだ。1巻本編に聖はマジでいなくて、チラシ先輩は普通にモブだった。
正体は汐里のシュッツエンゲル。そして学内でもトップクラスの知名度を誇る実力者の一人。人当たりも良いのでチラシ破りそうにはない。

聖は塩水が好物だったわよね

もてなしの紅茶の代わりに聖だけ塩水出されそうになるギャグ。1巻でも4コマの夢結様が2度もやってるけど、塩対応が上級生間で流行ってんのか…?敵に塩を送るってそうじゃないぞ。

楓・J・ヌーベル

2章中盤で登場し、登場したページで梨璃にセクハラを行う。書き下ろしエピソードでは罪を犯したり妄想で犯したりする。今回彼女の戦闘描写は無いが、すべきことはした感があってひどい。

梨璃に執着する理由が小説内ではここで初めて明言されるが、「一目惚れですわ」の一言で終わり。まあ楓の方の都合で考えるとそれしか無いんだよな…。梨璃やその周囲にとっても謎とされているが、梨璃のカリスマを抜きにしたらマジでそれしか。
梨璃を誰か別の人間と重ねてるみたいな、ありがちな線はほぼ無いし。「あの人と似ている…!」で欲情してたら更にヤバいものな。

番匠谷依奈

表紙の人物2。夢結がかつて所属したアールヴヘイムのメンバーの一人。気が強いようで非常に打たれ弱く、アールヴヘイムの解散以降スランプに。今は壱盤隊にいるが、アールヴヘイムは伝説級のレギオンで、依奈もまた超人とされていたため、現状の体たらくに幻滅されて益々不調に陥っている。実力こそ落とさなかったが、協調性を失った夢結とは違う形で苦しみ続けていた人物。

「円環の御手」で最新機種の第3世代CHARMを二刀流するという、かなり豪華な戦闘スタイルを取るが、百由と共に過去を乗り越えるために更に上の次元を目指す。復活か廃人かの賭けができるのは流石リリィか。

第3世代CHARM

まだ百合ヶ丘でもそうは普及していない最新世代CHARM。第2世代の変形に加えて、分離合体で更に多様に変化する。
まあ、まんまな進化。第1→第2と同じく、基本性能が劇的に上がったわけではないので、全てのCHARMを過去にするわけではない。

ノインベルト戦術

「ノインヴェルト」「ノインベルト」で表記ゆれしている戦術。小説では1,2巻共に「ベ」だが、公式ツイッター等の最近の文字情報は「ヴェ」。というわけで今ではノインヴェルトが正だと思う。ノインベルトって言ってる人は小説などの過去のコンテンツを知っているのかも知れない。

今回は「9人フルではなく、少人数で複数回周回してマギスフィアを溜める」という戦法が出てくる。アリなんだそれ。
ただしヒュージはかなり的確に阻止を狙ってくるので、バリアの端っこでバレずに溜めきるみたいなことはできない。パスを多人数で回す場合と比べて、他のメンバーでの足止めがかなり重要になる。

高出力砲

百由の秘密兵器。携行を一切想定していない、ちょっとした大砲並に大型の射撃型CHARM。変形しないため定義上は第1世代。
長距離狙撃でラージ級(本来ギガント級以降で使うノインヴェルト戦術を持ち出すほど硬い特殊個体)を葬るほどの活躍を見せたが、想定外の消費電力で百合ヶ丘女学院を停電させて説教されることに。
ここまでだと半分くらいギャグだが、ほんの一時とはいえ防衛施設である百合ヶ丘を機能不全にした事実や、過去には攻撃範囲の方が想定外で多数の民間人を負傷させてしまい、アールヴヘイムの解散という形で責任を取ることになった問題の兵器だったということでやたら重い話になっていく。夢結が百由を避けてるのはこれのせい。

アニメ・ノベルにおける夢結とアールヴヘイム

しかしアールヴヘイムって、名前を引き継いでるレギオンがあったり、アニメ版では解散の経緯が違ってるみたいで、どれがどうなってるのかよくわかんなくなった…。
夢結の視点で整理してみるか。

ノベル夢結のキャリアは「初代アールヴヘイム→(高出力砲の民間被害不祥事で解散)→川添隊→(川添美鈴死亡で解散)→フリーランス→一柳隊」ということらしい。

一方で夢結はアニメ3話から「初代アールヴヘイム→(甲州撤退戦で川添美鈴死亡)→(初代アールヴヘイム分裂)→フリーランス→一柳隊」と分かる。

つまり、アニメだと高出力砲の不祥事と、それにより結成される川添隊が存在しない。だから夢結と百由の間にわだかまりがない。

そして初代アールヴヘイムは潰れ方こそ双方で違うが、二代目として壱盤隊が結成されるのは共通と。

第4世代CHARM

各企業が水面下で、百合ヶ丘では百由が研究を進めている次世代CHARM。「マギビットコア」などと呼ばれる数個の浮遊装置がリリィに随伴し、脳波に呼応して攻撃を仕掛ける。本体はヘッドギアを付けるのみで、直接構える武器は無い。

完成度と操作技術が理想的なら、単独で1レギオン分の働きをこなせるとされており、全てのCHARMを過去にしかねない。ただし研究は難航どころか、百由は人体実験に失敗して自身の親友「長谷部冬佳」を廃人にしている。工廠科内で避けられているのはこれのせい。だから重すぎるってば。

最終的に実用ギリギリの段階で実戦投入される。確かな戦果はあげるものの課題は山積み(脳負担による頭痛がヤバい)。かつ脳波を使う関係上、使用者ごとに特注のチューニングをする必要があり、量産化には程遠いという形で締めくくられた。

おまけ1:熱海編

単行本書き下ろしエピソード。リリィたちの休暇を描く話。一柳隊がメインだが、アームズの主要人物が大体出てくる構成。出てこないのはおっさんの石川精鋭くらい。ノベル2巻まででは一切関わってこない、他校リリィもチラ見せ程度に登場する(単行本特典のエピソードなので、本筋レベルの展開はない)。

そもそも、世界観的に平和ボケた話は期待できるのか…?とは作品に対して思っていたが、どうやらその気になれば不可能では無いようだ。大人数でまとまった休みが取れるし、防衛がしっかりしている慰安施設はいくらか維持されているらしい。勿論、なんでも出来るとはいかず、例えば学年全部空けることになる修学旅行は不可能で、過去の文化になっていることが言及されている。

おまけ2:鎌倉編

アームズ本編だと、シナリオ終盤のメインチームである壱盤隊のエースでありながら、構成上出番が殆どなかった遠藤亜羅椰がメインの話。熱海編でハブられた石川精鋭もちょっと登場する。
彼女は楓とほぼ同じ手合いの人間だが、楓と違って一途ではなく食い散らかすタイプ。壱盤隊に籍をおいたのも、性的に気になるリリィが2名いたのが決め手。本編で空気なのはバックボーンがこうチャラいせいでもある。

アニメでは梨璃をもターゲットに加えているが、小説版では今の所梨璃は狙っていない(可愛い子だったことはしっかり記憶している)。そのため楓との関係は特に険悪ではない。

ついでに、ドール製品としての「アサルトリリィ」がここで登場する。作中世界でもリリィにはアイドル的な側面があり、こういったグッズ類がリリィたちの活動資金源の一つになっているらしい。

おまけ4コママンガ:大川ぶくぶ

ポプテピピックの作者。当然作家の持ち味を出す前提の人選であり、おかげで1巻のおまけ4コマより更にノリが酷いことになっている。作中人物が作中人物に対して「アサルトリリィの原作読んだのか…?」と言い出すくらいには原作無視。まあその分強烈だからこれはこれで良いと思った。

商品仕様について

価格は定価1500円+税にアゾネットの送料880円で2530円と、技術書レベルの値段になる。
書き下ろしがあるとはいえ、Web連載版読んでて大半既読だったら正直手を出さなかったかも知れない。まあ連載はアニメ以前の話で、筆者は何も知らなかったのでその辺は平気だった。価格分のボリュームは確実にある。実際技術書並みに分厚く、設定にこだわっている作品なので情報量も非常に濃い。

最大のネックは電子版が無いこと。筆者はガチガチの電子派で、対するこれはよりにもよって厚さ3センチ400ページ超の大ボリュームだからマジで読みづらかった。
えらく限定的な流通形態からして、結構無理して書籍化した感じがあるから、あまり強くも責められんが…Kindle版で読んだ1巻が恐ろしく快適だったから辛い話だ。
まだ続刊あるなら次は電子ありで頼みたい。