漫画感想:カガクチョップ 第1巻

 買った。収録内容は1~12話と、かつて読み切り掲載された吸血会議を収録した13本。

感想

 出だしから不躾な物言いになるのは申し訳ないものの、描き下ろしや加筆の類は特に見当たらないのが凄く痛い。カバーとカバー裏はちゃんとした描き下ろしだが、ほぼそれだけ。巻頭カラーは1話扉絵と目次、各話の幕間の2ページはタイトルロゴやSDキャラの加工コピペで済まされている。
 無論よくあることだし、同作者の「キルミーベイベー」も折角のカラーページや幕間をシュールな絵で消費しちゃう事がザラだからそういう意味じゃ慣れっこでもあるが、無料で読めたWeb漫画作品となると別。今回の満足度と今後の購買意欲に直結した問題になる。要するに読み返したい回があるか、それなりにファンじゃないと価値が希薄な内容だったということ。私は後者なのでギリギリ。

 他所のWeb漫画レーベルは描き下ろし回などを収録して訴求力を強めているところが多いけど、メテオコミックスはそういう要素の要請や支援をしてないのかな?仮に作者の意向に任せているのだとしたら、本作はそれが裏目に出ていると言わざるをえない。本作の場合は過去回を見返す重要性が同サイト上の他作品より低い (大きなストーリーがない1話完結形式なだけでなく、キャラの掘り下げなども積極的に行われないため。)から、付加価値をもっと大切にして欲しいところ。現状は「どの話も正当にタダ読みできたんだからもうそれだけいいじゃん」って言われたら否定出来ない。吸血会議に使われた分のページが次巻でどうなっているかが一先ずの希望。

 勘違いしてほしくないのでちゃんと断っておくが、作品そのものは非常に面白い。あくまで「無料掲載を全話見た前提で見るとコミックスとしての価値が足りない」というだけ。序盤であることを差っ引いてもギャグの打率が凄い高いし、キルミーベイベーとは同じギャグ作品ながらも話の方向性とキャラの両方でしっかり差別化を見せており、2作品を同時連載している意義がちゃんと伺える。加筆以外で単行本に手を出す理由があるなら後悔させる内容ではない。

 ちなみに科学とタイトルに入っているが、その辺の知識や興味関心は全く必要ない。逆に言えばそっち方面の面白味を期待するのはお門違いというわけでもあるが、まあとにかく敷居は極めて低い。

特記事項

 折角だし、目についた要素を色々書き留めておく。

扉絵
 1話だけ例外的に存在する。1巻扉絵やコミックメテオ側のキービジュアルに必要だったわけだが、どうやらそういう事情がない限りは描かないらしい。店舗特典のパターンが少なかったのもこういう背景か。
 2巻掲載分では見かけた覚えが無いので、2巻扉絵は描き下ろしになるかも?

山本第一高等学校
 今だ謎のキルミーベイベーとは違い、1話から舞台の校名が明確に描写されている。制服はブレザー系で、男子生徒も居る。

長倉蓮(ながくら れん)
 A組クラス委員長。メガネ。頭は悪い。自称主人公。フルネームは「クラス長」の変形という説を聞く。他2人みたいに元ネタがあるなら最有力とは思うけど、クラス長っていまいち一般的な呼称じゃないから確信はしにくい。
 沙衣との立場上の接点はゼロだが、危ない実験をしている沙衣に対して正義感を抉らせて目を光らせている。でも実態はただの構ってちゃんだと思う。1話時点で成績の悪さなどが沙衣に把握されているので、一応前々からそれなりに互いを知る関係ではあったらしい。

鈴園沙衣(すずその さい)
 科学部部長。メガネ。それとアホ毛。現役女子高生にして個人事業レベルの研究開発をしている超科学者。成績も当然学年トップ。フルネームは「サイエンス」の変形。
 なんでも持ってくる辺りからキルミーベイベーのあぎりさんのような万能感を感じるが、沙衣の場合彼女自身は大して強くない。また本質は意外と常識的なようで、兵器すら作れる身でありながら武装の類は原則していない。なのでツッコミや不足の痛手は普通に直撃する。

盛本雨柚(もるもと うゆ)
 科学部部員。メガネじゃない。苗字はストレートに「モルモット」の当て字。これはひどい。3人目のキャラクターだが、不定期登場のあぎりさんとは異なりほぼ完全なレギュラー。
 菓子に釣られて拷問同然の被験体を請け負うなど、蓮に輪をかけてバカだが、かなり頑丈。ただしやすな程無事ではない。強度や再生力が劣ると言うよりは、沙衣の器具がヤバ過ぎるせいに思える。
 萌えキャラとしての完成度がかなり高くて可愛い。カラーイラストだと最強。

キャラの組と学年
 組は全員別で、蓮A沙衣B盛本C.学年は不明。沙衣は部長だが、他の部員が盛本しかいないので学年の判断材料にならない。
 ただ何年かはわからないというだけで、恐らく全員同学年ではあると思われる。沙衣は蓮に対して「組が別」とは言っているが、学年まで違うならまずそっちを突っ込むはずで、また蓮と盛本との顔合わせでもお互い組だけの言及で済ましている為。

作品の連載経緯
 あとがきとコミックナタリーの対談で言及されているが、元々同人作品だったものが、出版社に「これ連載作品にしない?」と誘われたことから連載に至ったらしい。同人がパイロット版というわけだ。

 でもこの作品って、1話が掲載された後2話目が来るまでに1年は放置されていた (第1話ラストの柱で、「連載再開でやったね!」と書かれているのはこういう背景があってのこと。)筈。連載前提で立ち上がった作品にしてはこじれたとしか思えない期間だ。経緯についてはある程度簡略化や美化が入ってるだろうな。単行本の簡素さも相まって邪推してしまうところ。まあ単純に、言う程スルスルと事を運ぶのが難しい業界だからしょうがないって感じでもあるけども。