考察感想:THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 05 夜想令嬢 ドラマパート

  • 夜想令嬢
  •  超今更だけど、そう言えばCDドラマの感想書いてない、というかそもそも積んでるなあと思った。3枚目が出てから間もない状態だし、GWだからこれを機に書く。

     で、書いたんだけど、いきなり結構辛辣な感想になった。注意。

特記事項

 夜想令嬢のドラマはミリシタコミュの完全版的な内容なので、追加された描写を中心に触れていく。

アレクサンドラ:二階堂千鶴

 エレオノーラ打倒後の暮らしが描かれている。エレオノーラは正体を隠して要人として過ごしていたため、彼女を倒したことでお尋ね者になる。
 追手を退けつつの逃亡生活を送っており、今では吸血鬼として覚醒したノエルに逆に守られることもあるようだが、そのことからバッドエンド風な幕引きになっている。そのうち、手に負えなくなったノエルを倒すか、自分も吸血鬼になるかの二択しかない。

 力の根源はよくわからなかったが、退魔の力を宿していた。不死の吸血鬼を灰と化し、普通の人間と同じようにあの世に送ることができる。
 あの世に送れる、というのは、エレオノーラ及び聴者だけが理解できる事実だが、もしアレクサンドラが気づいてしまう時があったら、彼女は何をするかな?

 しかし、お尋ね者になってるのってちょっと強引。エレオノーラの死体は即座に灰になってるので、立証困難だと思うんだが。とはいえノエルが吸血鬼な以上、人間の敵がいないと却ってヤバいから、こうなる事自体はしょうがないけどね。

ノエル:水瀬伊織

 エレオノーラの香が打ち切られ、アレクサンドラと共に逃走する日々が語られているが、強キャラだったことが発覚する。ただ身体能力がずば抜けているだけではなく、姉に害意を向けるものには躊躇しないので、精神面も含めて最強。エレオノーラはこの才能に目をつけていた。何かしらの超人の家系なんだろうか…。

エドガー:所恵美 クリス:天空橋朋花

 大筋の描写量はミリシタ版と特に変わりないが、悲劇性がより増している。
 エドガーが母から教わり、探し求めている楽園の正体が「あの世」であることが、CD版ではより強く示唆されている。しかし吸血鬼は死ねないし、彼らは生きたいので、事実であればたどり着くことはない。

 あとクリスとエドガーで性別がごっちゃなことに関して、CDではほぼ触れられていない。ごく僅かな日常会話シーンで言及があっただけ。ミリシタ上でもやたらインパクトがあったわりに特に活かされなかったが、結局想像用の隠し設定みたいなものだった。

ルカ:永吉昴

 CDでネームド化。エドガーとは面識もあり、会話内容からすると元はまともな人物だった様子。腐敗しきった政治がもたらした貧困で生活が立ち行かなくなり、ごろつきを従える野盗に身を堕としたようだ。とはいえ、エドガーに致命傷を与えても平然としている手慣れぶりからして、同情の余地は既に失われている。元々の役名「不良」は限界まで無理してオブラートに包んだ表現というほかない。本当よくもまあアイドルにやらせたよなこの役…。

 また、貧困とそれに伴う治安悪化はエレオノーラの仕業なので、エレオノーラは間接的にエドガーの仇ということにもなっている。本編中では拾われないが。

エレオノーラ:百瀬莉緒

 アレクサンドラに倒された後、あの世で独白をする。元は小城を構えた貴族の夫人だったらしいが、吸血鬼の嫌疑をかけられ、焼き討ちを受ける。自身は命からがら逃げ出したが、夫と子供はその時死亡した。
 逃げ延びた後に吸血鬼に誘われ、吸血鬼となって人間への復讐に走る。その方法は美貌を駆使して政治の根幹に潜り込み、政治を腐敗させることだったようだ。

 要は彼女自身も元は被害者。彼女がノエルを気に入り、アレクサンドラを欺いて吸血鬼に引き込んだことと同様に、彼女もまた吸血鬼の罠にかけられたのであろう。

 弱い吸血鬼は淘汰する的なことをいいつつも、ミリシタではエドガーより弱そうな描写だったが、CDでは戦闘描写すらなくやられている。吸血鬼の身体能力でどうこうするより、策を弄するタイプの人物だったらしい。アレクサンドラについては、ノエルをダシにすれば懐柔できると踏んでいた様子。

 唯一、彼女だけが平穏な楽園にたどり着いたのは究極の皮肉。

感想

 いまいちだった。バッドエンドもしくは想像におまかせっていう感じの終わり方だが、これはちょっと聴者に委ねすぎだし、過程の盛り上がりにも欠ける。
 主に以下のあたりに問題を感じる。

  • 主要人物の「平穏がほしい」「楽園に行きたい」という目的は曖昧で壮大すぎる。それに立ちはだかった「吸血鬼の悲劇性」と「王政腐敗」は重すぎた。結局どっちも解決してないし、吸血鬼の件は見込みすらない。
  • アレクサンドラとエドガー・クリスで主役格の視点が分散しており、しかも局所的にしか交差しない独自ストーリー同士。尺の食い合いになっている。
  • アレクサンドラは妹を救いたいという目的を持っていたのに、行動にほとんど主体性がない。ノエルを人質にしたエレオノーラにまんまと踊らされているのでしょうがないのだが、もう少し自力で真実を掴ませてあげてほしかった。例えばエドガーとクリスを見て、彼ら吸血鬼とエレオノーラに共通するものに気づくとか。
  • エレオノーラの悪事は全てアレクサンドラの死角で行われるため、ラストの問答にしか悪党演技がない。その後アレクサンドラに無抵抗でやられるので、仇やラスボスとしての風格がかなり足りない。演技自体は完璧なのだが…。
  • 結果的な山場は楽曲と同じくエドガーが「吸血鬼も幸せになっていいはず」と叫ぶシーンになっているのだが、この発言はアレクサンドラの剣を納めさせる以上の意味を成さないまま終わってしまったため、虚しい。
  • 話のオチが唐突にホラー調。実際どういう意図があるかはともかく、ぶん投げオチの黄金パターン。

 簡潔に言えば設定盛り過ぎ、そこに視点2つは完全にやりすぎ。これはどう頑張ってもまとまりも盛り上がりも散漫になってしまう。
 もちろん、意図的に雰囲気ありきで作った可能性もかなり高いし、ミリシタ版の内容から予想も可能だった終わらせ方だが、TAシリーズのように単体できちんとまとまっているストーリーを期待していたので残念だった。

 登場アイドルの演技は相変わらず凄いので、そっちが目的なら損はないと思う。コンセプト的にはそれもまた正しい楽しみ方。あと曲が気に入ってるならもちろん可。