漫画・書籍感想:あんごろもあちゃんの地球侵略にっき パーフェクト+今井神ビジュアルコレクション ニライカナイ

今井神ビジュアルコレクション ニライカナイ今井神ビジュアルコレクション ニライカナイ

 漫画家今井神氏のこれまでの総決算的な2冊(実は4冊)。
 2冊はそれぞれ別の商品だが、双方で連動漫画が仕込まれているなど色々関連付けされているので、この記事でまとめて記載。

あんごろもあちゃんの地球侵略にっき パーフェクト

 IT用語解説漫画。過去に単行本化された形跡があるが、完全掲載はこれが初だとか。
 基本的にページの上半分が漫画、下半分が出てきた用語の詳細な解説になっている。全ページフルカラー。

 まあ正直連動漫画が後押しした上での画集のついで買いで、読んだ後の印象も結局それなり。形式上パターン化の傾向が顕著で、漫画的な面白さが弱めなのが痛いな。ギャグとか部分部分はそこそこ面白かった。
 ちなみに解説部分は2014年時点のものに改められているため、時代的に的はずれな解説は極力出ないようになっている。ゆるい用語辞典としてもそれなりに行けるか。

 ラストにニライカナイとの連動漫画が掲載されている。こちらは前編3ページ。内容は画集の方で扱われている「魔法少女アルカ&ディア」の最終決戦を描いたものとなっている。…のだが、当然羞恥プレイしかしない。
 折角なので、ここではあんごろもあがよくオチでつかうギャグをやらされている。ひどい。

今井神ビジュアルコレクション ニライカナイ

Niraikanai

 中身はこの3冊。画集本体と「BLACK SPOT」上下巻が、画集と同じデザインのケースに収められている。ボリュームは凄い。

Niraikanai-GAMERS

 ゲーマーズ特典のミニ色紙。「ミニ色紙」という特典、たまに名称は聞くものの貰うのは初めてだったが、正方形のイラストカードだなこれは。

カラーページ

 基本的にカラーイラスト集。

アルカディア

 ゲーム雑誌でのお仕事。商業媒体の中では一番作者の思い入れが強いところと思われる。
 コラムかなにかの解説図と思わしきイラストまで掲載されており、単体では意味合いがよくわからないものもあるが、格ゲーを中心とした版権作品のキャラとかもバンバン描かれているので結構面白い。

NEEDLESS

 アニメ化もしたし恐らく一番有名どころ。表紙絵やカラー扉絵の他に、ビックリマンシール風のイラスト等、カバー折込部分にあったイラストも収録されている。
 カラー扉絵のコスプレショー率がやたら高かったのは、作中の衣装がほぼ変わらない分そっちの面白味を補完しようとした結果らしい。

白砂村

 NEEDLESSの前日譚らしい。本作の主人公がNEEDLESSにおけるキリストセカンドと聞いている。イラスト内のキャラもそちら側とで共通性を感じさせる風貌のキャラが多い。

あんごろもあ

 漫画部分そのものの掲載が多い。やや重複気味。しかし「再生しながら追ってくる阪神ファン」が強烈。

ニライカナイ

 本誌の店舗特典向けのイラストを普通に収録。セーラー服、戦闘服、クーポン時代の3点が入っている。
 特典はこれらとは違う絵の特典や、とらのあなの小冊子とやらが狙い目か。ゲーマーズのイヴ衣装の奴はなかった。

連動漫画

 あんごろもあとの連動漫画の後編。こっちはNEEDLESSネタが主体。やっていることはどっちもそんなに変わりない。

モノクロページ

 各作品のカバー裏イラスト等を収録。

カバー裏イラスト

 3作品のカバー裏イラスト。NEEDLESS14巻のタイトルロゴは何度見てもバカすぎて笑える。

今井神が語るアーケードゲームの思い出

 作者のアケゲー語り。最初の接触は修学旅行先の旅館のテトリス…アケゲー界隈はほとんど知らないけど、相当初期のことだろうな。

アルカディアクーポン解説イラスト

 アルカディアに付属していた、ゲーセンで使えるクーポン券の解説イラスト。初期は1コマ漫画だが、途中から3コマ漫画、晩年は4コマ漫画に。
 一応「クーポンの話をする」という基本の縛りがあるはずなのだが、それを感じさせないくらい思い切ったギャグが多い。その一環として「全裸にクーポン」って構図がやけに目についた。
 ただ吹っ飛んでいる分かなり面白く、本誌に画集以上の価値を出すのにかなり貢献している感がある。

魔法少女アルカ&ディア

 クーポンコーナーからリニューアルされたと思わしき1ページ漫画。上のクーポン漫画に出てくる小学生の女の子アルカちゃんが18歳になって再登場。歳をとった理由は無論脱がせるため。ブレない…。当然内容は基本エロ。
 クーポン時代にいた他のレギュラー、マー坊と8号先生はそれぞれ1回しか出ないが、2人ともアルカとの関係性や顛末が描かれたりしている。

召還!剣豪学園

 剣豪の末裔の美少女が通う暗殺者養成学校の漫画。確か今現在で唯一の連載継続作品。
 初めは4コマ漫画として日常系寄りの進行をしていたが、NEEDLESSと白砂村のクライマックスを皮切りにストーリー漫画に移行したのだとか。本誌には4コマ時代のものが収録されている。

BLACK SPOT 完全版(上下巻)

 色々と脅威の別冊付録。ボリュームはそのまま普通の単行本2冊分。内容はNEEDLESSの商業的な原型にして時系列上における続編。
 これまでは絶版同人系の作品だったため、幻のエピソード的な扱いだった。こっち目当てで本誌を買った人も相当多そう。

 初期の初期の同人作品なので、絵や漫画的な作りは流石に粗い。でもそれ以上に差があるのは作風で、現在の元気に変態活動な姿勢とは相当違いほぼシリアス、それも生き方だとかメッセージ性の強いやり取りが目立つ。この辺は明らかに空気が違うので取っ付きにくいかも。
 でも大筋の出来はいいので中々楽しめる内容。話自体も投げっぱなしとかではなく、ちゃんと本作内で完結する造りになっている。

 主人公は「NEEDLESS1.5」のカインのようだが、1.5と比べると激情ポエマーな性格になっているのは兎も角、身の上も大分違う感じなのはどうなんだろう?
 もしかしたら別世界かも。まあ、同一世界だとしたらリリース作品の中でも一番未来の話ではないだろうか。

総評

あんごろもあ

 漫画としての魅力は感じない。構成上派手な展開や大掛かりな話はやりづらかったらしく、ワンパターン気味な印象が拭えない。
 ただ既にギャグ作画のパンチの強さは発揮されていたので、一捻りさえできてれば相当別物だったと思う。

 テキトーなノリでもいいからIT用語に触れてみたかったり(解説自体はそれなりに正確)、連動漫画が気になる人向けといった印象。

ニライカナイ

 こっちは非常に面白かったが、難点は目立つ。個人的に不満かどうかはさておき、目についた点を具体的に挙げるとこの辺り。

・NEEDLESSや白砂村関連のイラストは網羅度が低い。ギリギリいちコーナーになる程度のページ数を割り振ったという印象。
・というかカラーページの割合自体が画集としては小さい。ページ数で割って4割弱。
 →一応理由はあって、一番ページを割いているアルカディア漫画が元々モノクロのため。カラーイラストをケチってモノクロ掲載しているわけではない。
・文字のコーナーはカバー折り込みのまえがき、作者のアケゲー語り、作品解説を兼ねたあとがきのみ。インタビューの類は無い。
・「かたつむりちゃん」関連の資料は一切無い。許可が降りなかったと思われる。これはしょうがないか。

 要するにアルカディア漫画とBLACKSPOTが数量上のメインコンテンツとなっている状態。画集を名乗る割には漫画としての側面が大幅に先行した内容になっている。

 ただし、あんごろもあ含めた2商品のコンセプトはどちらも「ちゃんと書籍化できなかったものをまとめて見せる」ということになっているのは色々な点から見て取れる(特にBLACKSPOT付録)。
 NEEDLESSとかの絵はそれらの単行本買うだけで最低限の絵は大体見れるし、インタビューなんかはNEEDLESS完結時にWebでやってたりしているが、ゲーム雑誌漫画のアルカちゃんや同人のBLACKSPOTなんて他所じゃ本気で見ようがない。一番供給が必要なものを選んだと考えれば至極真っ当な構成だと言える。

 最後にハッキリ言うが、本誌は「NEEDLESS・白砂村の完結記念画集」ではなく、「今井神の漫画家活動を振り返る画集」。前者を期待して買うと肩すかしな内容で、BLACKSPOT目当てでもどうだろうって感じ。だってあくまで黎明期の同人で、今後商業媒体でNEEDLESSの続きとして正式に描き直さない限り、結局は色々な意味でNEEDLESSとは別物の存在だと思うし。
 まあ作者の全体的な軌跡やレア作品が見たいなら十分楽しめる内容。アルカディア関連は面白かった。